遺産財産の使い込みを発見した方へ

遺産財産の使い込みを発見した方へ父親が死亡した後に、父親の預貯金通帳を見たときに、死亡前後において預金口座から多額の金額が引き出されていることがわかる場合があります。

例えば、死亡前に長男が多額の現金が父親の預貯金口座から引き出して使用していた場合、また父親死亡後に長男が多額の現金を引き出して使用していたという場合が考えられます。

このような場合、他の相続人はどのように対処したらよいのでしょうか。

遺産財産の使い込みが疑われる場合は、相続開始の前後に分けて考える必要があります。

 

●相続開始後に多額の現金が引き出されていた場合

本来であれば、相続開始した時点で銀行などの金融機関へ被相続人である父親が死亡した事実を伝えて口座を凍結してもらわなければなりません。そのような手続がなされないうちに相続人の一人である長男が勝手に多額の現金を引き出していた場合、もちろん生前贈与などの主張は成り立ちません。

このような場合は、長男が他の相続人の相続分を侵害しておりますので、他の相続に対して各自の相続分に相当する金員を返還しなければなりません。長男が任意に返還しないのであれば他の相続人は不法行為や不当利得にもとづく訴訟を提起して返還を求めなければなりません。

なお、従来の実務においては、相続開始後に処分された遺産については、相続人全員の合意があれば、遺産分割時に存在していない財産についても遺産分割の対象としておりました。

そして、今般改正された民法906条の2条では従来の実務を踏襲したかたちで、相続開始後、遺産分割前に遺産が処分された場合には相続人全員の合意の下、処分財産を遺産分割の対象にすることができるようになりました(906条の2第1項)。

また、相続開始後、遺産分割前の財産処分が相続人の一人が行っていた場合については、処分財産を遺産分割の対象とするにあたってはこの相続人の合意は不要とされました(906条の2第2項)。

先ほどの事例で、父親死亡後に長男が勝手に父親の預貯金から引き出して使用していた場合、他の相続人の合意があれば、長男が勝手に使用した金額については遺産分割の対象とすることができます。そうすることで遺産分割協議の中で、長男が使い込んでいた分を清算することができます。

改正された民法により相続分を侵害された他の相続人は別途不法行為や不当利得の訴訟を提起することなく、遺産分割手続の中で公平に解決することができることが多くなると解されます。

 

●相続開始前に多額の現金が引き出されていた場合

相続開始前に長男が父親の預貯金口座から多額の現金を引き出して使用していた場合はどうでしょうか。

この場合、先ほどの相続開始後の場合と異なり、民法906条の2の適用により長男が処分した財産を他の相続人の合意で遺産分割の対象とすることはできません。

相続開始前の現金引き出しについては場合を分けて考える必要があります。

 

➀ 長男が父親から生前贈与を受けていたと解される場合

父親が生前に長男に預貯金口座から引き出させ贈与していた場合は、他の相続人は自らの相続分を侵害されていませんので返還を求めることはできません。もっとも、長男が生前贈与を受けた金額は特別受益に該当し(民法903条)、遺産分割時に各相続人の相続分を計算するに当たり考慮されますので、長男の相続分は減ることになります。

 

➁ 長男が父親のために生活費などで使用していた場合

長男が父親の口座から引き出した現金を生活費など、父親のために使用していた場合は他の相続人は自らの相続分を侵害されていませんので返還を求めることはできません。また、長男は引き出した現金について生前贈与を受けておりませんので特別受益に該当せず、相続分の計算にあたり考慮されることもありません。

 

➂ 長男が勝手に父親の口座から勝手に引き出していた場合

このような場合、他の相続人は長男が勝手に引き出した金員については相続分を侵害されておりますので、返還を請求することができます。しかし、長男が任意に返還しない時には、不法行為もしくは不当利得として訴訟を提起して返還を求めることになります。

 

相続人の一人が遺産財産の使い込みをしている疑いがある場合には銀行の取引履歴などを取得するなどして調査をしていく必要があります。また、遺産分割協議は紛糾することが予想され、対処法を考えながら進めた方がよいと思われますので、現金の引き出しや使い込みがあると思われる場合は、当事務所まで一度ご相談下さい。

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