遺産分割の流れと注意点

1 遺言書の有無と注意点

まずは、遺言書があるか否かを確認します。具体的な分割方法が記載された遺言書がある場合には、遺言書に記載された内容と別の取り決めをするという合意ができれば別ですが、遺言書のとおりに分割します。遺言書の有効性や解釈に争いがあり当事者間の合意で解決できない場合には、遺言無効確認訴訟等で確定する必要があります。特に遺言書の有効性や解釈等については、専門的な知識が必要になりますので、遺言書がある場合にも弁護士が介入することで適切な助言を得ることができます。

さらに、遺言書の内容によっては、法律上保証された最低限の遺産を侵害されている相続人がいる場合がありますので、遺言書の内容にも注意が必要です。その場合には他の相続人に侵害された不足分を請求する遺留分侵害額請求権を行使できますが、遺留分侵害額の算定や時効の問題等も出てきます(遺留分については、遺留分侵害額請求について遺留分について遺留分を請求できる人(遺留分権利者)について遺留分の請求方法遺留分侵害額請求を早期に弁護士に依頼するメリット遺留分侵害額の計算,をご参照下さい)。

 

2 相続人の範囲と注意点

遺言書がない場合には、相続人は誰なのか相続人の範囲を確認します。民法は法定相続人の順位を定めており、第一順位の法定相続人は子である一方で、配偶者は常に相続人となります。しかし、例えば、養子縁組や婚姻が無効である、別に子どもがいるなどの主張がある場合には、相続人の範囲が確定しませんので遺産分割の手続きを進めることができません。その場合には、養子縁組無効確認の訴えや婚姻の無効確認の訴え、認知の訴えなどの裁判で争うことになります。また、被相続人の相続関係が複雑になっている場合も多々ありますので、相続人の範囲を適切に把握するには注意が必要です。

相続人の範囲が確認できたら、民法で定められている各相続人の相続分(法定相続分)が決まりますので法定相続分を確認します。

 

3 遺産の範囲と注意点

相続人の範囲と法定相続分を確認できたら、被相続人の遺産の範囲を確認します。遺産分割の対象となる遺産は、原則として被相続人の死亡時にあり、現在もあるものに限られます。そのため、例えば生前に一部の相続人により預金が使い込まれたなどの主張をする場合には、交渉や不当利得返還請求等の民事訴訟等が必要になる場合があります(遺産財産の使い込みを発見した方へ」参照)。さらに、他に遺産があると疑われる場合がありますが、相続人全員が認めない限りその遺産があることを証明するなどして交渉や民事訴訟等により確定する必要があります。

また、被相続人に債務がある場合には、当然に法定相続分に応じて各相続人が債務を負担しなければなりませんので、債務があるか否かは特に注意が必要です。また、生命保険については受取人が被相続人以外の者に指定されている場合には遺産に含まれませんが、被相続人が指定されている場合には遺産に含まれますので受取人の確認には注意が必要です。

なお、被相続人(亡くなった人)の預貯金債権については、従前の裁判例では遺産分割の対象とならず、法定相続人が金融機関に対し、相続分に係る預貯金部分について単独で支払いを求めることができましたが、最高裁平成28年12月19日決定(民集70巻8号2121頁)により従前の裁判例が変更され、遺産分割の対象となり、個々の相続人が遺産分割前に預貯金の相続分について権利行使ができなくなりました。

しかしながら、今回の民法改正により、被相続人の預貯金についてはその金額の3分の1に各相続人を乗じた額については単独で権利行使をすることが認められるとともに(民法909条の2)、各相続人が預貯金の仮払いを受ける制度(家事事件手続法200条3項)ができました。

 

4 遺産分割協議と注意点

遺産の範囲が確認できたら、相続人全員でどのように分割するかを協議します。遺産分割協議は相続人全員で行う必要がありますが、相続人全員の同意があれば、どのような分割方法でも自由に決めることができます。その前提として、遺産の評価が重要になりますので注意が必要です。例えば、土地の場合は評価方法も様々であり一般的に評価額も大きくなりますので、適切な評価を主張する必要がありますし、分割方法についても、各相続人において特定の遺産への思い入れ等もあり対立することもあります。弁護士の介入により遺産の適切な評価や分割方法の主張及び交渉により協議の成立を目指すことができます(遺産分割協議について」、「遺産分割の手続とポイント」をご参照下さい)。

最終的に、相続人全員で遺産につきどのように分割するか合意できれば遺産分割協議書を作成しますが、後日に協議の有効性が争われないように協議書の内容にも注意が必要です。相続人全員の間で遺産分割協議が有効に成立した場合には、遺産分割が終了します。

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