●遺留減殺請求権から遺留分侵害額請求権へ
遺留分権利者が自らの遺留分を請求するためには権利行使をする必要がありますが、実際の請求額はどのように算定されるのでしょうか。旧民法では、遺留分権利者が行使する権利を遺留分減殺請求権と言われておりましたが、改正された民法では遺留分侵害額請求権と言われるようになりました(「遺留分侵害額請求について」をご参照下さい)。
●遺留分侵害額の具体的計算方法
次の事例で、遺留分侵害額を計算してみます。
事例 被相続人Aは、子B、Cを残して死亡し、相続開始時点に借金が1000万円だけであった。しかし、Aは亡くなる3ヶ月前に知人Ⅾに5000万円を贈与し、その半年前に子Bに営業資金として4000万円を贈与していた。この場合のB、Cの遺留分侵害額はいくらになるでしょうか。 |
遺留分侵害額の計算式は次のとおりです。
遺留侵害額=【遺留分を算定するための財産額】×(個別遺留分の割合)-(遺留分権利者が受けた遺贈又は特別受益の額)-(遺留分権利者が相続によって取得すべき財産の額)+(遺留分権利者が承継する債務の額)
上記の【遺留分を算定するための財産額】の計算式は次のとおりです。
【遺留分を算定するための財産額】=被相続人が相続開始時に有した財産+第三者に相続開始前1年間にした贈与の価額+相続人に相続開始前10年間にした婚姻もしくは養子縁組または生計の資本としてなした贈与の価額-相続債務
本事例の場合、【遺留分を算定するための財産額】は8000万円となります。
【計算式】=5000万円+4000万円-1000万円=8,000万円
そして、B、Cの個別遺留分の割合はそれぞれ4分の1となります(「遺留分を請求できる人について」をご参照下さい)。
そうすると、B、Cの遺留分侵害額は次のとおりとなります。
Bの遺留分侵害額=8,000万円×1/4-4,000万円+500万円=-1,500万円
Cの遺留分侵害額=8,000万円×1/4+500万円=2,500万円
以上のとおり、Bの遺留分侵害額は0であり、Cの遺留分侵害額は2,500万円となります。そして、Cは知人Ⅾに対して遺留分侵害額を請求していくことになります。
上記のとおり、遺留分侵害額の計算は複雑となっておりますので、遺留分があるのではないかと考えておられる相続人の方は、まずはご相談下さい。当事務所では、相続問題については初回無料の法律相談を行っておりますので、なるべく早くご相談に来ていていただければと思っております。