●遺留分請求の具体的方法
遺留分を侵害されている相続人(遺留分権利者といいます。)は、遺留分を侵害している相続人、受遺者や受贈者に対して、遺留分侵害額請求権を行使していくことができますが(「遺留分侵害額請求について」を参照して下さい。)、具体的にはどのような方法で請求するのでしょうか。
遺留分侵害額請求の請求できる期間については以下の規定があります。
民法1048条 遺留分侵害額の請求権は、遺留分権利者が、相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時から1年間行使しないときは、時効によって消滅する。相続開始の時から10年を経過したときも、同様とする。 |
遺留分権利者が相続の開始等があったことを知った時から1年で、相続開始の時から10年で遺留分侵害額請求権は時効により消滅するので、遺留分侵害額を請求するには時間的な制限があります。
そのため、遺留分権利者は、遺留分が侵害されているのであれば早急に手続を取る必要があります。
まずは、遺留分侵害額請求権が時効にかからないようにするために、遺留分を侵害している相続人、受遺者や受贈者に対して、遺留分の割合を示して侵害されている遺留分を請求するとの意思表示を行います。一般的には内容証明郵便などで請求することになります。
なお、贈与や遺贈が複数あり、侵害者も複数にわたる場合は当初の段階では、誰に、どの程度の金額の請求ができるのかわからない場合もありますので、侵害していると思われる者全員に対して内容証明郵便を送付しておくのが無難です。
この時点で、侵害されている金額が具体的に算出できていない場合は、上記内容証明郵便には具体的に請求する金額まで明示する必要はありません。もちろん、遺留分侵害額が明らかな場合は、請求額を記載しても構いません。
もっとも、具体的な侵害額を明らかにしないまま、遺留分侵害請求権を行使するとの内容証明郵便を送った場合は、後日、具体的な侵害額を明示して、改めて金銭の支払請求を行う必要があります。金銭の支払い請求についても内容証明郵便で送付することが一般的でしょう。
●侵害された遺留分を取り戻すには
では内容証明郵便等で侵害された遺留分を請求する書面を送った後はどうなるのでしょうか。
仮に侵害額500万円を請求する旨の内容証明郵便を送ったとします。請求された相続人等が任意に納得して支払ってくれる場合は問題ありません。しかし、請求された相続人が、請求権者が遺留分権利者であることを争ったり、遺留分侵害額について争ってくる場合などは任意に支払ってくれることはありません。
このような場合、遺留分権利者としては調停や訴訟で解決を検討する必要が出てきます。
遺留分の請求にあたっては、遺留分侵害額請求の意思表示、遺留分侵害額の算定、調停や訴訟の検討など、当事者で適宜適切に判断・対応していくことは困難かもしれません。特に侵害された遺留分を取り戻すにあたっては、遺留分を正確に算定する必要がある(遺留分侵害額の計算参照)からです。
このように遺留分制度は遺留侵害額の計算などが複雑となっておりますので、遺留分侵害額を請求したいと考えておられる相続人の方は、一度、弁護士へご相談されることをお勧めします。